地域電器店的・ニュースレターと売上のしあわせな関係について

先日のアトム電器社長会(FCオーナー会議)では「ニュースレターコンテスト」が行われました。

 

各店めいめいにお客様に自店情報や思いなどを発信されているニュースレターを年に一度、みんなで投票して相互評価しましょう、という企画。私が入社した2010年ごろには既にメッセージコンテストという名称で存在していましたから、もはや恒例と呼ぶにふさわしい企画です。

 

 

売上に直結することのない、自分たちのどちらかと言えば個人的な情報や考え、思いといったものを届ける紙媒体のコンテストが15年以上続いている訳ですが、年々下火になるどころか、今回エントリー店数は過去最高だったんです。

 

新たに取り組まれるお店も年を追うごとに増えている印象です。

 

売上に直結することのない紙媒体の提供を継続する意味

売上に直結する媒体と言えば、商品が掲載されているセールやキャンペーンのチラシなどが考えられます。これはWebでの販売が増えたとはいえ、スーパーや家電量販店の店頭、場合によってはポストに投函されるなど、今でもずっと続いていますし、そこには売上を立てるためという絶対的な理由が存在します。

 

一方でそういう役割を持たないニュースレターをお届けするのも、また別の意味が存在します。

 

「中の人」の顔が見える企業とそうでない企業

電器店に限らず店舗運営=ビジネスである以上、売上を追求しなければいけません。
ところが上がる時もあれば、そうでない時もあるのが売上の厄介なところです。

売上が下がり、閑散期が続くと頭をもたげてくるダメな思考パターンというものがあります。

 

1:「売れないのは景気のせい」
2:「売れないのは近くに家電量販店が出来たせい」
3:「売れないのは土地柄、地域柄のせい」

 

電器店FC本部にいると、この3つは本当に耳にします。誰しも売上が低迷すると不安になるものですが、嘆いていてもお客様は来てくれないのも事実。そこで何をすべきか、ですが、簡潔に言えば上記3つの考え方の逆を発想をしてみることです。

 

1’:景気のせいにせず、「自店とお客様の間の関係」で考えてみる
2’:競合店の存在に構わず、「自分達の個性・特長」をどんどん発信する
3’:地域性のせいにせず、まずお客様を理解することに努めてみる

 

儲かる商品、儲かる情報を求めて右往左往するよりも、「今の自分に出来ること」を見定めて自店発信に徹する方が遠回りに見えて、低迷を脱する契機になりやすい、というわけです。

 

例えば少し古い情報ですが、2014年の「ほぼ日刊イトイ新聞」のファンドマネージャー・藤野英人さんとの「投資とはたらくことの話」という対談の中で、日本の上場企業の中でもホームページ上で社長・役員の顔写真を出し、自分達の言葉で語りかけている企業とそうでない企業では東日本大震災後、株価の回復度合いに大きな差があったことが言及されています。

 


これを上記のニュースレターコンテストに当てはめて独自に調査してみました。

 

地域電器店的「ニュースレター」と売上の関係

アトム電器で
①チェーン本部に売上報告を上げて頂いている=723店
②①のうち、コロナ禍の前と後ともコンテストにエントリーしている=75店
③②以外のエントリーが無く、ニュースレター取組みは不明=648店

これをコロナ禍前2年間(2018、2019年)の月平均売上=100%と設定し、②と③のグループの平均売上を比較してみました。

 

 

こちらも分かりやすい差が出ました(③はニュースレター自体はされている(エントリーしていないだけ)場合も含まれますので、調査の精度を高めればもっと違いが出るものと思われます)

 

もちろんニュースレターで顔見せや情報をお届けすることだけがこの差の理由とは言い切れませんが、ここまで鮮明な結果を見ると、やはり相関関係を感じざると得ません。

 

以前、ご加盟店で昭和の頃のようにインターホンを鳴らして、ご用聞き訪問はやりづらくなった分、ニュースレターはその代わりの役割を果たしてくれる、という意味で「心のピンポン」と仰られた方がおられましたが、正にそういうことだと思います。

 

また、お客様という外向けの効果と合わせて、内容を考えて発信することで店長さん・スタッフさん達のお客様への向き合い方が変わる、内向きでの効果も見逃せません。

 

閑散期ほど、外に要因を求めるのではなく、自分達の内面や、お客様との関係のあり方を見直してみる。

端的に言うと「お客様の懐にいい距離感で飛び込めているか」。

グラフ自体は売上への好影響を示していますが、それ以前ここが本当に大切なことだ、と改めて感じました。

このブログを書いた人

メオマサユキ

(株)アトムチェーン本部 店舗運営部長。「アトムのメオマサさん」で長く公式アメブロ「町の電器屋さんの小さな販促実践委員会」を担当。㈱アトムチェーン本部入社後、経理、法務、 加盟店相談、店舗開発、物流部長を経て、2023年3月より現職。