まちの電器屋さんの小さな販促実践委員会
本当は怖い値決めの話
以前近くにあった定食屋さんがちょっと前に閉店してしまいました。そのお店は開店当初から客足が安定してないな、という印象でした。味は悪くない。けど値決めに「?」を感じるお店でした。行っていたのは随分前なのでうろ覚えですが、こういう感じのメニュー表。
とんかつ定食 | 580円 |
焼肉定食 | 780円 |
からあげ定食 | 780円 |
野菜炒め定食 | 780円 |
豚しゃぶ定食 | 780円 |
とんかつ定食が580円ってお得ですよね!どうしてもとんかつ定食率が高くなります。でも注文すると明らかに嫌な顔をされるんです。
え~?嫌なの!? 嫌だったらその値段で出すの止めた方が・・。
いくら安くてもお互い嫌な悪いまでして食べたいって人は少ないですよね。そうこうしていると、メニューの改定がありました。こんな感じ。
とんかつ定食 | 880円 |
焼肉定食 | 880円 |
からあげ定食 | 780円 |
野菜炒め定食 | 780円 |
豚しゃぶ定食 | 780円 |
580円は何だったの!?ついでに焼肉定食まで値上げされているし!
一番よく出ているとんかつ定食を値上げすれば売上が上がるか言えばそんなこともなかったようで、客足がどんどん遠のいて行ってしまい、最後の方は1000円バイキング!とかやってたけど、結局はお店が無くなってしまいました。
飲食業やっている身内がいるので分かるんですが、とんかつ定食は採算取れていなかったと思うんです。でも580円を理由も無く880円にすればお客様は「300円もぼったくってる」って思います。ホントは原価が600円とかだったとしても。
じゃあどうすれば良かったんだろう?
ではどうすれば良かったのか。これという正解がある訳でもありませんが、例えばこういう感じです。
日替わり定食 | 580円 |
からあげ定食 | 780円 |
豚しゃぶ定食 | 780円 |
ビッグとんかつ定食 | 880円 |
野菜たっぷり焼肉定食 | 880円 |
580円の価格帯は無くしません。その代わり日替わり定食にして、580円の中で採算がとれ、なおかつ580円以上の満足を感じてもらえるメニューを考えます。とんかつ定食は元々大き目のとんかつだったので、更に大き目に揚げてビッグとんかつ定食として売り出します。キャベツお代わり自由とかオプションを付けてもいいですね。焼肉定食もただ値上げするだけでなく、野菜炒め定食と組み合わせてヘルシー志向という別の価値を付けることで、価格に説得力を持たせます。思い付きですがざっくり言えばこういう感じですね。
値決めはお客様との目に見えない会話
値決めはこのお店のように自店都合(採算が取れる・取れない)に捉われ過ぎてしまうと、結果としてお客様を振り回してしまいます。またライバル店を見過ぎると安売り志向に傾いてしまい、悪い意味で顧客の奴隷になってしまいます。(業界都合)
安さではなく、設定した価格でどのようにすればお客様がそれ以上に喜んだり、満足してもらえるか。値決めしながらお客様との目に見えない会話をシュミレーションするわけです。ここを何度も何度も繰り返せば、説得力のある値決めが出来ます。自店都合や業界都合は目の前のお客様にとっては直接は関係のないことです。値決めの時に具体的にお客様の言葉が浮かぶこと。これが出来るかどうかである意味経営って決まってしまいます。
まちのでんきやさんの場合、身近なお客様の顔を思い浮かべながらやれば大丈夫ですよ。
このブログを書いた人
メオマサユキ
(株)アトムチェーン本部 店舗運営部長。「アトムのメオマサさん」で長く公式アメブロ「町の電器屋さんの小さな販促実践委員会」を担当。㈱アトムチェーン本部入社後、経理、法務、 加盟店相談、店舗開発、物流部長を経て、2023年3月より現職。